小説 | ナノ


▼ り。様

「あれ?飛雄じゃん!」

飛空が寝てしまったのでベビーカーを押しながら大型ショッピングモールをうろうろしていると、飛雄くんが知り合いに引き止められる。

「げ、及川さん...」
「げ!って何?!」
「そのまんまの意味すけど...」
「岩ちゃん聞いた?!ひどくない?!」

2人とも見たことのある人物で、会釈をして「影山の家内です」と挨拶をする。

「お〜!影山の奥さん、お久しぶりです」
「お久しぶりです。そちらの方って、もしかして...アルゼンチン代表の...?」
「ああ、及川さん。俺の中学の先輩」
「え?!そうだったんだ!はじめまして」
「生で会いたいと思ってたんだよね!飛雄どう?飽きたらいつでも声かけてね!」
「あ、飽きません...!」

及川さんに握られた手を飛雄くんが払いのけてそのまま手を繋がれ正直恥ずかしい。

「飛雄ちゃん...ちょっと過保護すぎない?」
「いや今のはおめーが悪い」
「てか飛雄キッズの寝顔めちゃくちゃ飛雄じゃない?ほら見て」

背の高い2人がベビーカーを覗き込み、アンバランスな状態に思わずわたしは笑いが我慢できず笑ってしまう。

「いや〜それにしても、まさかでもあの飛雄がね〜!及川さんより先に結婚して子供なんて!しかも2人目?!羨ましすぎるんだけど!しかも名前ちゃん写真で見るより綺麗だし!」
「はぁ」
「ねえ、飛雄ちゃんちょっと冷たすぎない?!」
「久しぶりに話すんで対応に困ってます」
「そんなハッキリ言う?!」
「まあでもこないだの試合、やっぱ及川さんすげーってなりました」
「そうだな」

言葉と裏腹に表情はとても悔しそうで、その顔久しぶりに見たなぁと微笑ましくなる。

そのあと飛空がお昼寝から起きて、及川さんの子供の扱いのうまさに驚く。

「かげやまとあくんです!2さいです!こんにちは!」
「飛空くんは飛雄ちゃんと違って素直で可愛い!!!!ちょっと飛雄!写真撮って!」
「飛空、こっち」

カシャ、とカメラの音がして満足そうに及川さんは写真をSNSに載せて楽しんでいた。

「名前ちゃんも一緒に撮ろう〜!」

と肩を寄せられこれが海外のスキンシップ...!とわたしは固まるだけだった。

「名前さんから離れてください」
「はあ?!」
「名前さんも何すんなり肩抱かれてるんすか。怒りますよ」
「えっ、ごめんね...?」
「あー!パパがママいじめてる!」
「ねー!飛空くんのママ可哀想だねー?」

及川さんと飛空が2人して飛雄くんをじとーっと見つめているので、その顔が面白くてくすくす笑っていると岩泉さんが後ろから及川さんの頭を叩き「悪ぃな、影山」と謝罪。

「岩ちゃん...!!」
「じゃあ俺らあっちだから。名前さん体気をつけて、出産頑張ってください。影山もまたな」
「まあ、飛雄も海外で頑張ってるみたいだしまた試合しよう」
「っす。負けません」
「元気な子が生まれてきますように!」

そう言って去って行った及川さんはすぐにファンの子に声をかけられていてイケメンは凄いなと独り言を呟いてしまう。

「及川さんは中学ん時からファンとかいてすげーモテてた」
「へ〜」
「俺らが、及川さんの学校に勝って春高出てなきゃ名前さんは及川さん追っかけてたかもな」
「え?!なんで?」
「...及川さんは凄いセッターだ」
「ふふ」
「何笑ってんだ」
「飛雄くんが及川さんのこと凄いって思ってても、わたしは飛雄くんのことが1番格好いいし凄いし、大好きだよ!って思っただけ」
「そうかよ」
「とあくんもパパすき!」
「ね〜?パパが1番かっこいいよね〜?」

照れ隠しで早足の飛雄くんが愛おしくて、可愛くて。後から及川さんから隠し撮りされてたわたしたちの写真がとても幸せそうで。及川さんにお礼言っておいてねと言うが飛雄くんはものすごく嫌そうな顔で「ああ」と言ってきたのでまだお礼を言ってないんじゃないかと心配してます。



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